StarBED5プロジェクト
第5期プロジェクトStarBED5の概要

1.StarBED構築時の基本コンセプト

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、通信・放送機構(TAO)時代の2002年に512台のPCサーバを相互接続スイッチで接続したテストベッド設備「StarBED」*1を構築。大規模汎用インターネットシミュレータとして運用を開始し、ネットワークシミュレーションやネットワークの挙動の把握・解析・予測等を研究テーマとする第1期プロジェクト「StarBED1」*2が始まりました。 「StarBED」を構築した基本コンセプトは、必要に応じて各研究機関が個別に構築していたシミュレーション設備を常設し、複雑かつ大規模なシミュレーションを実施できるテストベッドとして、インターネットの研究開発を支援することにありました。このテストベッドの活用により、設備・ツール・知識の共有と再利用が促進され、研究開発の低コスト化やR&Dサイクルの短縮などの利点が実証されました。

*1:当センターでは、テストベッドの設備名は「StarBED」、 プロジェクト名は「StarBED+プロジェクトの期ナンバー」で表すようにしています。

*2:第1期プロジェクトは「StarBED」と呼んでいましたが、第2期プロジェクトのスタート以降、設備名としての表記とプロジェクトとしての表記を明確に区別するため、「StarBED1」と表すように なりました。

2.プロジェクトは今、第5期へ:第5期プロジェクト「StarBED5」
-シミュレータから実環境まで、すべてのモノ・コトとICT環境の相互環境を検証するために-

これを踏まえ、2006年にはStarBED設備を拡充するとともに、プロジェクトのミッションスコープをユビキタスネットワークに拡大した第2期プロジェクト「StarBED2」を開始。バイナリコードレベルで最終製品に近い形のシステムを検証できる1,000台以上のPCサーバからなるテストベッドを構築し、有線のみの環境ながらも無線環境を検証できる大規模な環境を提供して参りました。

2011年から第3期プロジェクト「StarBED3」がスタート。ミッションスコープを新世代ネットワーク及びそのセキュリティ、サービスに関する技術の研究開発に拡大するとともに、さまざまな有線・無線が混在したネットワークやサイバーフィジカルシステムへと手法の拡大いたしました。

2016年からは第4期プロジェクト「StarBED4」を開始。すべての人、そしてすべてのモノがネットワークに接続されるIoT時代の検証基盤を構築するため、PCだけではなく携帯電話やセンサーなど常に身近にあるデバイスが動作する基盤と、それらをつなぐ温度場や電磁場までも検証環境に取り入れるための研究開発を行うとともに、次世代の製品開発を加速化する一助となるためのテストベッドの研究開発を行いました。

そして2021年からは「StarBED5」として第5期プロジェクトが始動。シミュレーション環境・エミュレーション環境・実環境により構成されたパーツをシームレスに接続し、またそれぞれのパーツの抽象度を変更することが可能なサイリアル環境を構築し、理論検証から実運用まで一貫して対応出来る検証環境の構築を目指します。サイリアル環境では、シミュレーションにより計算した物理現象のパラメータをリアルタイムにエミュレーション環境に取り込むことで、ICT環境を取り巻く複雑な環境を含めた検証を可能とします。

StarBED5プロジェクトでは、StarBED4プロジェクトまでに実施した研究内容を含め、次の研究トピックに取り組んで参ります。

●新たなデバイス・新たなプロトコルへの柔軟な対応
●新たなICTシステムへの対応
●高度な無線システムへの検証基盤の構築
●外部シミュレータ・エミュレータとの連携プラットフォーム
●R&Dのライフサイクルサポートの提供
●IoT・CPS環境を取り巻く空間エミュレーション
●大規模・複雑なネットワークシステムのベンチマーキング